高校野球と本会

理学療法士による青少年期の健康増進への関わりの実例として、われわれがこれまでに行ってきた競技大会支援、高校野球選手への傷害予防に対する一連の活動を紹介します。

Ⅰ はじめに

高校野球選手の傷害予防に対する具体的な取り組みは1993年8月、財団法人日本高等学校野球連盟と大阪大学医学部整形外科学教室の相互協力のもと、大会に先立ち、試合に登板する可能性がある全選手の肩肘機能検査が始まりました。この検査により肩および肘に傷害の既往を持つ投手や、強度の炎症症状を有して出場する選手が多数いることが判明しました。その結果を踏まえ、1995年12月、財団法人日本高等学校野球連盟理事会において、甲子園大会での投手としての出場禁止規定が設定されました。その他、全国レベルでの野球指導者に対する研修会の開催や傷害予防についてのビデオ制作等、種々の取り組みがなされています。
これら高校野球選手の傷害予防を目的とした取り組みに、(社)アスリートケア(旧スポーツ傷害理学療法研究会)がどのように理学療法士の専門性を活かして関わっているかを具体的に紹介します。

Ⅱ.投手の肩肘機能検査

1.医師による投手関節機能検診

大阪大学整形外科に所属する整形外科医師約20名で分担し、大会前の甲子園練習の際に行うことを原則とし、検診対象は投手に限られています。筋力、疼痛部位、単純X線写真、関節可動域などから肩・肘関節の診察を行った結果、総合的に肩と肘に関して別々に、正常、軽度、中等度、重度の症状、投球禁止の5段階の判定を行っておられます。大会日程の進んだ準々決勝・準決勝の後には、同様の検診を行い、肩・肘の症状の悪化がないかを確認し、重度の傷害に至らないよう配慮されています。

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2.理学療法士による肩肘機能検査

〇問診

理学療法士が選手に対して傷害の現病歴や既往歴などを問診しています。近年は熱中症症状を訴える選手が多く、大会中の選手の状態を把握するものとして熱中症アンケートを実施しています。

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〇関節可動域測定

理学療法士がペア(関節誘導×測定)となり肩関節、肘関節、前腕に対して関節可動域の測定を行っています。また、測定したデータを集計し今後のコンディショニング指導に活かしています。これまでの測定結果として投球側の肩関節外転90°位での内旋、肘関節屈曲伸展、前腕回内外の可動域減少傾向がみとめられています。

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〇コンディショニング指導

疲労部位の訴えの多い肩関節の後面と前腕前面のストレッチングを必須項目に挙げ指導しています。医師による診察結果から個別に必要なコンディショニング指導があれば、理学療法士が指導にあたります。

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3.甲子園大会の検診業務を通じて

投手の肩肘機能検査にて数年間、傷害部位の確認や関節角度の計測を行っています。医師による検診、理学療法士による肩肘機能検査を行う事で選手が障害予防について認識し、自身がストレッチングやコンディショニングを行えるようになることも検診・検査を実施する目的の一つです。また、これらの方法を自身が各学校などに持ち帰り伝達することで、セルフケアの方法や野球選手の傷害予防が更なる広がりをもてることを期待して活動をおこなっています。

検診班