高校野球と本会2

Ⅲ 甲子園大会における救急処置とコンディショニング

1.救急処置

〇熱中症対策

夏に開催される全国高等学校野球選手権大会では、連日猛暑の中で競技が行われています。そのため熱中症の対策が非常に重要であり、我々の取り組みの一つとして、スポーツドリンクを作成し各チームのベンチ内と試合前練習場にドリンクサーバーを用意しています。ベンチ内には氷嚢も準備しており、選手に適宜使用を促しています。また熱中症のアンケート調査を実施し、過去に熱中症になったことのある選手は、特に注意して観察するよう事前に申し送りが行われています。3月下旬に開催される選抜高等学校野球大会においても熱中症様症状を呈する選手がおり、気温の低い春先でも水分摂取が重要だと考えられます。

毎大会後にはドリンクの消費量や熱中症症状が出現した選手の数、毎日の気温変化などのデータを分析し、次大会に向けた熱中症の発生予防に努めています。

〇処置

試合前の室内練習場でのウォーミングアップ中に選手の状況を引率責任教員に尋ね、必要であればテーピングなどの処置を行っています。試合中はベンチ裏のトレーナールームで待機しており、デッドボールや走塁中の衝突等で外傷が生じた場合には医師・看護師と連携して必要な応急処置を行います。試合後にはそれまで処置をした選手の確認と再処置、さらには他に処置が必要な選手を確認し、テーピングやアイシングなどの対応や必要に応じて連盟を通じて医療機関の診察を促しています。

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2.クーリングダウン

メディカルサポートでは、登板した投手に対して肩と肘のアイシングを行っています。毎試合終了後、疲労の早期回復を目的に各チームに分かれてベンチ入り選手全員に対してクーリングダウンを実施しています。特に投手は登板後の疲労部位調査をもとに疲労しやすい部位(主に肩後面筋や前腕屈筋群)のストレッチング指導を必須項目とし、さらに選手個々の疲労部位に応じたパートナーストレッチングや軽運動等を個別に実施しています。野手に対しては一人のスタッフがデモンストレーターとなり、疲労を訴えやすい腰部や下肢を中心に集団でセルフストレッチングを実施しています。また、アシスタントスタッフも配置し、目的の筋が伸張されているかを確認することで質の向上にも努めています。

また、クーリングダウンの重要性や具体的な方法を伝え、チーム内や地元に持ち帰ってもらえるよう教育的観点も持って指導しています。

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3.コンディショニング

自校の試合がない日に予約制で、超音波や低周波治療器などの物療機器を併用し疲労回復および痛みの軽減を目的としてアプローチしています。また帰宿してからも継続的に実施できるよう選手個々に応じたセルフコンディショニング(ストレッチング、トレーニング)の指導も行なっています。

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コンディショニング班

Ⅳ 物品

メディカルサポートに必要とされる物品全般の準備および整理をしています。

扱っている物品は、試合前に行う処置に必要なテーピングやサポーター、試合中のアクシデントによって起こる外傷に対するテーピングやスプリント、創傷に対する処置物品など、あらゆる状況に対応できるよう各種物品を準備しています。また、熱中症予防のためのスポーツドリンクや試合日以外に行うコンディショニングで使用する物療機器(電気治療器やホットパックなど)も準備しています。

各種物品の使用方法の周知も必要で、メディカルサポートスタッフへの指導や伝達なども行っています。選手に対し、迅速な対応が求められるサポートの現場において最善を尽くすには、より効果・効率の高い物品を準備する必要があるため、幅広い情報を収集しながらメディカルサポートの充実化を図るため日々活動しています。

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物品班

Ⅴ 海外帯同

海外帯同については、電子媒体の機関紙(Beside athletes)に過去の海外帯同報告がされていますのでご参照ください。

Ⅵ 啓発活動

競技団体などの主催する講習会に会員である理学療法士が招聘され、指導者や選手を対象として損傷予防に関する講義や実習を行っている。

またストレッチングマニュアル(静止画)と、 warming upやcooling downの動画などを法人のHP(http://www.athlete-care.jp)上に配信している。さらに競技者や指導者も読者対象としたストレッチングやテーピングの解説書1)、2)を出版し、主催者により全国の加盟校と関連団体に配布された高校野球の障害予防を目的とした啓発DVD(pitch smartⅢ)の製作にも参加した。

1)井上 悟(編):アスリートケアマニュアル ストレッチング.文光堂,東京,2006.
2)小柳磨毅(編):アスリートケアマニュアル テーピング.文光堂,東京,2010.