帯同報告集

国際親善高校野球大会(アメリカ) 2000年

佐藤睦美(大阪大学医学部附属病院 理学療法部)

(現・大阪保健医療大学)

2000年8月21日、第82回高等学校野球選手権大会が智弁和歌山高校の優勝で幕を閉じるのと同時に、全日本選抜チームのアメリカ遠征メンバーが発表されました。
今回はロサンゼルスで全米高校選抜チームと北西太平洋選抜チームの2チームを相手に4試合を9日間で行う予定になっており、最大の特徴は選手が米国到着か ら帰国までずっとホームステイするということでした。練習や試合の後のコンディショニングが遠征での大きな仕事の一つですが、今回の遠征では球場からホー ムステイ宅へ直接帰宅し、翌日球場に集合するという毎日のため、コンディショニングを行う時間がないことが出発前から予測されました。

8月25日に中沢佐伯野球記念会館にて結団式が行われ、監督・コーチ・役員・選手の全員が初めて顔を合わせました。選手はこの後8月29日までの5日間、野球会館に合宿をしてチームとしての練習を行います。
野球会館の中には6畳程度のコンディショニングルームを設置していただき、ホットパックと各種機器も研究会からお借りすることができました。
私は、選手が朝食を食べている頃に出勤して、選手の消灯が終わってから帰宅するという形で合宿に参加させていただきました。出発前に宿舎でテーピングな どの処置を行ってから移動用バスで練習用グラウンドに向かいます。グラウンドでは練習前のウォーミングアップと練習後のクーリングダウンや熱中症予防のた めの飲料水(甲子園大会で使用していたスポーツドリンク)の確保が私の仕事でした。宿舎に戻ってからはコンディショニングです。他の先生にもお手伝いいた だき、毎日2名体制で対応することができました。甲子園大会で勝ち残ってくる選手ばかりですので、大会の疲れもまだ十分に回復してはいません。投手の肩や 野手の腰や足などの除痛や筋の柔軟性の回復が主な内容でした。

8月29日、午前中の練習を終えた後、ロサンゼルスに向かって出発しました。飛行機の上は約12時間。今まで海外遠征に帯同された先生方から「シートに 座っているだけでは絶対に腰痛を起こす」と忠告をいただいていましたので、「ストレッチしよう!」と頻回に声を掛けるのですが、そこはお年頃のせいか恥ず かしがって腰を上げません。仕方がないので、トイレに立った選手に、トイレの前でさせるという強硬手段に出ました。

16時間の時差のため、ロサンゼルスに到着したのは同じ29日の正午前。空港のロビーで選手達はホストファミリーとの対面を果たし、現地の方の歓迎式典 などを終えて、役員はホテル、選手はそれぞれのホストファミリー宅へと別々の所へ向かいました。翌日からの練習はロングビーチにある球場で、内野まで芝の あるとても美しい球場でした。
ウォーミングアップの時の選手の第一声は「涼しい!!」でした。日差しは強いのですが、湿度が低いために「カラっ」としていて、不快感が全くと言っていい ほどありません。今年の日本の記録的な熱さに加え、木陰一つない合宿中の練習グラウンドでのウォーミングアップと比べて、天と地ほどの差であったのは私も 身をもって経験しました。練習中は、グラウンドサイドの芝生に休憩中の選手を寝かせ、ストレッチなどのコンディショニングを行いました。この頃になると投 手は自主的にアイシングを行うようになっていました。

試合も練習と同じ球場で行われ、1日目はダブルヘッダーでした。全米選抜のエースは速球派で、大リーグからのスカウトもあるという選手でした。日本チー ムの選手の一人が彼のボールを頭部に受けるというアクシデントに見舞われ、周りは非常に心配しましたが当の本人はケロッとしており、ホッと胸をなで下ろし ました。試合中は登板予定のない投手のコンディショニングを芝生の上で行ない、時々飲料水の点検にベンチへ行くといった形で過ごすことが多かったです。
2日目は何事もなく過ぎたのですが、3日目、球場へ行くと、初日に頭部にデッドボールを受けた選手が「今朝から調子が悪い。頭がフワフワする。」と言って きました。念のために医療機関を受診させることになり、ホストファミリーの方2名と本人、私の4名で救急外来(ER)へ行きました。TVで見るERとは雰 囲気が違い、初診(看護婦の問診)までに30分ぐらい待ち、専門医の診察を受けるのにさらに1時間、CT検査まで1時間、結果を聞くのに1時間 . . . と日本の病院真っ青の待ち時間で何とか「異常なし」の診断をいただき、球場へ戻りました。
試合そのものは3勝1敗で全米選抜チームとの同率優勝ということになりました。

この遠征に帯同させていただくまでは、男性チームの遠征に女性が帯同するのは難しいのかもしれないと思っていたのですが、私なりの関わり方が見つかった ような気がします。今回の経験を生かして、スポーツ選手に少しでもよいものを提供できるように知識と技術を磨きたいと思っております。
このような貴重な機会を与えてくださった日本高等学校野球連盟ならびにスポーツ傷害理学療法研究会の皆様に深く感謝申し上げます。